vol.3

サルサソースでジャンルを超える地産地消

Ecle.enishi (エクレ エニシ)
2020.11.29

和の食材に変化球の
モダンメキシカン

引き継ぐ伝統とものづくりへのこだわり。嘉永元年創業の小倉屋山本は、令和を迎えた今も時代を超え、商品を通してその真髄を届けています。

その道の一流料理人に、小倉屋山本の昆布・出汁などの商品を活かした特別コラボメニューを発案していただくこの企画。3回目のコラボ先は、大阪・新町に店を構える「Écle.enishi(エクレエニシ)」さんです。フレンチの経験を積んだ谷本悠一シェフが、モダンメキシカンという新しい料理の概念に、日本の食材とフレンチのエッセンスを加えたイノベーティブなメニューを発信しています。

気になるコラボメニューは、通常コースメニューの食前スープ、ペアリングカクテル、オリジナルタコスの3品に、小倉屋山本の昆布や出汁を組み合わせて再提案されたもの。一体どんな風味が、口の中に広がるのでしょうか。

料理を支える旨味を
昆布と出汁で追加する

席につくとまず登場するのは、『玉露と味司のおだし』。口につけた瞬間、濃厚な貝の香りと、玉露の風味が混ざり合った味司の上品な味わいで、乾いた胃を温めてくれる。まるで金箔のようにおだしに浮かぶのは、玉露だ。

アペリティフ、アミューズ、オードヴルとコースが続く中、料理に合わせて提案されるオリジナルのペアリングカクテル『サンルイスヴェルデ』が出される。ライトグリーンの色をしたそのカクテルは、青リンゴと緑のほおづきのピューレと“味司”の出汁シロップという実験的なテキーラ。甘さの中に、酸味と少しの青臭さが共存し、グラスの縁に散りばめられた乾燥醤油が、時間により味を変化させていく。

ポワソン、ヴィアンドの後に、メインの『帆立とアオサのタコス』がやってくる。緑茶トルティーヤの上に、アオサの衣を身にまとった“薄塩 えびすめ”昆布締め帆立が鎮座。フリットの断面は、美しい造形物のようだ。弾力感のあるトルティーヤに“黒とろろ昆布”ごと巻いてサルサソースと一緒にいただくと、帆立の柔らかい食感と隠された複数の風味が広がる。高揚感のまま、コース最後のデザートに突入する。

塩味と旨味と酸味の
絶妙なバランス

谷本悠一氏(シェフ・代表):
「コース料理の流れの中でお出しする3品に、昆布と出汁を組み合わせています。『玉露と味司のおだし』は、玉露と味司の出汁と貝を、30分ほど丁寧に煮出しています。温度や抽出方法によって、味が変わる面白さが玉露にはあります。料理のコンセプトとして、残さず使いきりたいという意識があるので、出汁に使った玉露を粉砕して、おだしの中に忍ばせてみました。全て安心して食べられる素材を扱っているからこそ可能なことでもあります。

オードヴルと合わせてお出しする『サンルイスヴェルデ』は、自家製カクテル。鰹の味の効いた味司の出汁をシロップにします。旨味が強く、これだけ飲んでも美味しいですよ。青リンゴと緑ほおづきの酸っぱ苦さを組み合わせ、複雑な甘さにこだわっています。

最後に、タコスで何か作れないかと、えびすめを食べて、帆立との組み合わせを閃きました。海の香りをさらに掛け算するために、黒とろろ昆布もトッピング。酸味が丁度いいんですよ。えびすめと黒とろろ昆布の塩味と旨味を活かして、味付けは本当にシンプル。自家製のメキシコ唐辛子のサルサソースと、昆布の相性が意外と良いことにも今回気づきました」。

日本の農業の未来から
食文化を考える

谷本悠一氏(シェフ・代表):
「近年、日本の農業に関心を持っています。日本では、農業などの第一次産業が危機的に衰退しています。食文化とは、地産地消から生まれるもの。日本の食材を日本で食してきたから、発酵という日本特有の食文化が発達してきたのです。日本の食文化を支えるためにも、日本の農業をまず守りたい。そして料理人として、食材を無駄にせずいただき、美味しく提供するという役割を担いたいと考えています。

イタリアン、中華、フレンチなど、今の日本では多くのジャンルの食事が楽しめます。ならばもう一歩踏み込んで、ジャンル自体を超えて食を楽しんでみては?例えば、サルサソースって、ベースがトマトであれば、あとは何が入っていてもOKなんです。固定化されたレシピがない。自由ですよね。僕がお店をモダンメキシカンと唄っている理由もそこにあります。メキシコ料理の概念はきちんと汲みつつ、日本の食材や技術を活かした、新しいメキシコ料理をつくればいいと思うんです。

家庭料理も、レシピ通りじゃなくても大丈夫。これに昆布を入れたらどんな味になるだろう?出汁を合わせたら美味しいかな?とインスピレーションを働かせてみてください。日本の食材を見直すことで、普段の食卓も豊かに広がると思います」。

シンプルかつ美しく
懐かしくも斬新なコース料理

誰もやったことがない独創的な料理を提供したい。そんな想いから生まれたエクレエニシ。メキシコ料理の自由なマインドとその調理法に惹かれ、培ってきたフレンチの技巧とを統合。日本の土地で生まれた、自然農薬・無農薬の野菜や肉魚などの食材にこだわり、古くから伝わる食文化を踏襲しつつ、谷本シェフは、新しいアイデアの調理法を常に探っている。コース料理とペアリングで、モダンメキシカンの世界に溺れよう。

INFORMATION

ーINFORMATIONー

【提供店舗】
Ecle.enishi (エクレ エニシ)
住所:〒550-0013 大阪市西区新町1-22-22-104
電話番号:06-4394-8585
メールアドレス:ecle.enishi@gmail.com
営業時間:12:00-15:00/18:00-24:00
定休日:不定休
URL:https://www.ecle-enishi.com/
instagram:@ecle.enishi

※提供期間(2020年12月2日~12月20日まで)詳細については、お店にお問い合わせください
※提供期間内では、特別に単品メニューとしてもお受けいたします

今回使用した小倉屋山本の商品

『だしパック 味司』
化学調味料・保存料は不使用。北海道道南産の真昆布に、国産のあご煮干・いわし煮干・かつお節・宗田節・うるめ節を6種類を合わせた、だしパック。香り・風味・旨味など、各素材の特徴を絶妙なバランスで整えた出汁が、料理の下支えとなる。

『薄塩 えびすめ』
塩ふき昆布の元祖「えびすめ」の風味を損なわずに、塩分のみ25%カットした一品。真昆布の深い旨味を追求。ふっくらと柔らかな食感で、老若男女問わず安心して食べられる。

『黒とろろ昆布』
こだわりは、職人の手削りから生まれる、繊細な絹糸のような柔らかさ。昆布の素材を最大限に活かし、原材料は昆布と醸造酢のみ。ほどよい酸味が、温かいもの冷たいものどんな料理にも優しく溶け合い、料理に品の良い奥深さを与える。